タンスの肥やし

タンスの肥やし

これは、故人(祖母様)の「きもの」を処分するときに、実際にあったお話しです。

ある女性より、次のような依頼がありました。
「祖母の、このきものを帯に加工してください。」というものでした。

もちろん、それは可能ですが、所々生地を「つない」だり、シミが残ったりするので、
それを伝えたところ、驚きの返事が返ってきました。

「多分、仕上がった帯は締めない(使用しない)ので、
帯の形にしていただければ、それで充分です。
大切な「きもの」を帯に残したい気持ちなのです。」

 

処分しきれなかった故人の「きもの」を、そのままタンスに終(しま)うことは簡単ですが、
「タンスの肥やし」になることを感じていたそうです。

帯に加工し、それに携わることによって、故人の「きもの」を共有する思いを持ったのです。
タンスに戻すだけでは、故人の「きもの」の域を脱していなかったことを、
何度も何度も経験されていたのですね。

また、祖母様のタンスの中を全部処分し、空にしたとすれば、何を感じるでしょうか?
スッキリすると同時に寂しく思うでしょう。
その寂しさは、祖母様の存在を自分の手で消してしまうような感じでしょうか。

 

当店でも、タンスの中の「きもの」の整理に立ち会ったり、相談を受ける機会が多くなりました。
「処分するもの」、「残すもの」、そして「着用は不可でも形を変えて、手元に置きたいもの」に分けます。

たぶん「処分するもの」は本人もわかっているので、私たちの助言があれば「やっぱりね。」と納得され、 処分するのに安心感を持たれます。

そして、「生かせるきもの」のリメイク(再生・シミ抜き・サイズ直し等)の相談をさせていただきます。

 

「また今度にしよう」と先延ばしにすれば、一年はあっという間過ぎるものですね。
それが「タンスの肥やし」ですよ。

 

きもの淳彩庵ホームページ

https://junsaian.com/

 

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